研究概要 |
電気化学とフェムト秒レーザー分光を組み合わせて,フォトクロミック反応の光ダイナミクスを解明する事を目的とし,光パラメトリック増幅システムに高調波発生ユニットを導入した。これにより,フォトエレクトロクロミック化合物に対し,適用可能な励起波長範囲を従来より大きく広げることが可能となった. 溶液中のフォトクロミック反応と電気化学特性を明らかにするために,アゾベンゼン誘導体およびアゾ基で架橋されたテルピリジン誘導体を有するRu錯体,Rh錯体を用いて,その光反応ダイナミクスをフェムト秒過渡吸収分光により解析した。その結果,Ru錯体の場合は,アゾベンゼンを光励起しているにも関わらず非常に効率良く数百フェムト秒以内にRu錯体に励起エネルギー移動しており,光異性化が観測されなかった.これは,定常光で異性化の反応量子収率がほとんど0であることに対応している.一方,Rh錯体の場合は,過渡吸収分光,相対量子収率の測定からアゾベンゼン誘導体のみの異性化速度約5psと同程度の時間で異性化していると考えられるが,安定構造へ至るにはさらなる構造変化が必要であり、それに数百ps必要であると推定された。また,n-π*遷移とπ-π*遷移が近接している水溶性アゾベンゼンについてもその光ダイナミクスを研究した。その結果n-π*遷移とπ-π*遷移が離れているアゾベンゼンに比べ,基底状態へのエネルギー緩和が500fs程度と非常に早くその特性が明らかになった。さらに,ジアリールエテン系フォトクロミック化合物に関してもその光反応ダイナミクスをフェムト秒分光で調べると共に,その電気化学応答を解析した。
|