研究概要 |
電気化学的応答とフォトクロミズムを示すRuおよびRhの金属錯体を有するアゾベンゼン系化合物を東大・西原研で合成していただき,その反応ダイナミクスを研究した。さらに,固体表面でのフォトクロミック反応解析への展開を目指し,長鎖アルキル基を有するスピロピラン誘導体の単分子膜およびキャスト膜を作製し,AFMおよび時間分解蛍光SNOMで解析した。 1)Ru金属錯体を有するアゾベンゼン系化合物のフォトクロミズム アゾ基で架橋されたRu(II)の二核錯体の過渡吸収スペクトルは,490nm付近にブリーチングが観測されその立ち上がりのは約200fsと求まった。一方,配位子のみのRu金属錯体ではブリーチングの立ち上がりが観測されなかった事から,アゾ基で架橋されたRu(II)では,アゾベンゼンの光励起によりRu(II)錯体への高効率励起エネルギー移動が起こっている事が明らかになった。 2)Rh金属錯体を有するアゾベンゼン系化合物のフォトクロミズム アゾベンゼン配位子の異性化をフェムト秒分光により解析した。その結果,S_1状態から約2.9psで異性化が起こっていることを明らかにした。また,Rh(III)の二核錯体はアゾベンゼン配位子の過渡吸収スペクトルと類似しており,このスペクトルの解析からS_1状態においてアゾベンゼンと同程度の数ピコ秒の寿命成分も得られた。この事は、非常に大きな金属錯体がアゾ基に付いてもRh(III)二核錯体の異性化は数ピコ秒で起こっており,異性化の起こらないRu金属錯体と対照的である。 3)固体界面でのフォトクロミック反応の解析 スピロピラン誘導体の単分子膜およびキャスト膜を作製し,そのフォトクロミズムをAFM,時間分解蛍光SNOMで解析した。その結果,光照射でメロシアニンに変化した後,熱によりJ-会合体へと構造変化する事,その際に数μm以下の分子集合体の移動があること,熱条件により葉模様ないし円形状の構造が生成することなどを明らかにした。また,メロシアニンが集合したJ-会合体の蛍光ダイナミクスを解析した。
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