研究課題/領域番号 |
10450327
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小平 紘平 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60002002)
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研究分担者 |
中山 享 新居浜工業高等専門学校, 講師 (50300637)
樋口 幹雄 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40198990)
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キーワード | 希土類ケイ酸塩 / 酸素イオン伝導体 / アパタイト構造 / 浮遊帯溶融法 / 単結晶 / 非化学量論性 / 導電率の異方性 |
研究概要 |
アパタイト型構造を有する希土類ケイ酸塩(Ln_<9.33>(SiO_4)_6O_2:Ln=La-Dy)は新しいタイプの酸素イオン伝導体であり、Laの場合、焼結体試料において低温での導電率は安定化ジルコニアよりも優れていることが知られている。しかしながら、これまでにこの化合物の大型単結晶が育成されたという報告はなく、バルクとしての本質的な物性に関する詳細は必ずしも明らかになっていない。そこで本研究では、比較的単結晶試料作製の容易な集光式の浮遊帯溶融法により、アパタイト型希土類ケイ酸塩の単結晶を育成し、その酸素イオン伝導機構を中心にバルクとしての真の性質を明らかにすることを目的とした。 本年度は、この系の化合物の中でも比較的光の吸収のよいNd系とSm系について単結晶育成をおこない、その電気的性質について検討した。両者とも一致溶融することから、融液から容易に単結晶を育成することができた。ただし、Nd系については条件によっては気泡の取り込みが問題となった。化学量論組成の原料を使用した場合、育成速度を2mm/h以下とすることにより、また、量論組成よりも若干Ndを少なくした原料を用いた場合には、育成速度が5mm/hでも気泡を全く含まない単結晶を得ることができた。このことから、Nd系の場合は化学量論組成と一致溶融組成が異なり、後者は前者よりも若干Ndが少ない組成であることが予想された。一方、Sm系の場合には、気泡の取り込みはほとんど問題にならなかったが、マイクロクラックが発生しやすいため、巨視的欠陥を完全に排除した単結晶を得るには至っていない。しかしながら、クラックはc面に平行に入るため、導電率の測定には大きな障害とはならない。これらの単結晶の導電率は、c軸に平行な成分がc軸に垂直な成分よりも一桁以上大きく、明確な異方性が示されるとともに、焼結体では1桁ほど小さかったSm系の導電率が単結晶ではNd系のそれとほぼ同等であることが明らかとなった。
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