研究概要 |
これまで伝導性カンチレバーを持つAFMを用いてTiO2表面に局所的に電場を印加することにより酸素を吸着させることが出来た。また酸素吸着の後、紫外線を照射しながら正の電圧をTiO2に印加することにより吸着酸素の光脱離も可能となった。そこで、この吸着酸素あるいは脱離を空間的にどの程度の空間分解能で制御できるかを検討した。また、銅イオン伝導体Culを被覆させたカンチレバーを用いて、TiO2表面に金属銅の堆積実験を検討した。 ベクタースキャンを用いて任意のパターンでカンチレバーを移動できるようにした。まず最初に酸素中で-3.0Vの電圧をTiO2表面に印加しながら1000nmx1000nmの領域で縦縞のパターンを形成させることを試みた。その結果AFMトポグラフに5nm程度の隆起を持った縦縞のパターンが形成された。このパターンの幅は50nm程度と極めて広く、満足のいくものではなかった。そこで20nm×20nmの領域でSYならびにKKの文字をベクタースキャンで書いたところ、AFMトポグラフに5nm程度の隆起を持った文字SY, KKが形成され、文字幅は5nm程度と極めて高い空間分解能が得られた。このパターンは電流像からも確認出来た。この文字パターンは酸素中あるいはアルゴン雰囲気中でも消失せず、また紫外線照射だけでも何等の変化は認められなかった。しかし、紫外線照射を行いながら、10Vの電圧を印加することにより文字パターンは消失した。これらの結果からTiO2表面に電場印加することにより数nmの空間分解能で酸素吸着を局所的に起こすことが可能となり、加えて紫外線照射とプラスの電圧印加により吸着酸素の光脱離が選択的に起きることが明らかになった。 銅イオン伝導体Culを被覆させたカンチレバーを用いて、負の電圧をTiO2表面に印加すると銅が析出し、反対に正の電圧を印加すると堆積した銅が除去された。これはCulの銅イオンの電気化学的酸化還元反応がTiO2表面とCul界面で進行したことを意味している。堆積した銅は50nm以下の線幅を持ち、これによりナノスケールでの電極作成が可能となった。
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