研究概要 |
クロロフィルをガンなどの光治療に用いるためには,その分子構造を任意に変換できる手法を確立する必要がある。本研究では,まず酸触媒によるクロリン環の異性化および脱金属(フェオフィチン化)反応の溶媒効果および反応条件を詳細に検討した。その結果,例えばアセトン/水系で,アセトン濃度の低い領域ではバクテリオクロロフィルg(BChl g)からバクテリオフェオフィチンg(BPhe g)およびクロロフィルa(Chl a)からフェオフィチンg(Phe g)へのフェオフィチン化が優先的に起こるのに対し,アセトン濃度の高い領域では,BChl gからChl aへの異性化が優先することが見出された。 一方,生体触媒による半人工系での側鎖エステル結合の加水分解による親水性の高いクロロフィルの合成を試みた。すなわち,植物細胞の破砕物に含まれるクロロフィラーゼによるChl aの加水分解をアセトン/水系で行い,生成物をヘキサン/水系に分配させる事により分離・定量した。その結果,Chl aに対して約10時間の反応で90%以上の加水分解率を達成した。以上の結果から,クロリン環およびその側鎖の構造変換をかなり任意に行う可能性を得た。今後は,単離の困難なクロロフィラーゼの代替としてエステラーゼ,プロテアーゼなどによるクリーンな系での加水分解およびエステル交換法を確立する必要がある。
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