研究概要 |
蛍光性tpyである4'-フェニルtpyのパラ位に置換基を導入し、蛍光チューニングを検討した。置換基の電子供与性の増大に伴い、局所励起遷移帯に対して分子内電荷移動(ICT)遷移帯は大きく長波長シフトし、アミノ置換体ではICTが最低エネルギー遷移帯となった。分子軌道法MOPAC/AM1から、この要因としてフェニル基に局在するHOMO-1が上昇し、tpyに局在するHOMOを越えることが示唆された。分子軌道レベルの制御により蛍光チューニングをおこなった例は皆無であり、より戦略的な蛍光特性設計への足がかりを提示した。 Ru(II)およびOs(II)の、2,2'-ビピリジン(bpy)および2,2':6',2"-テルピリジン(tpy)錯体の発光効率の改善を目指し、4,4'-ジフェニルbpy(pbpy)と4,4"-ジフェニルtpy(ptpy)を合成した。これらのRu(II)およびOs(II)錯体について、最大で約10倍の発光増加が見られたことから、当初の目的を達成した。さらにRu(bpy)_2(dppz-NH_2)は、Ru(pbpy)_2(dppz-NH_2)とすることで吸光係数および発光量子収率それぞれ約2倍に増加し、より高性能のエネルギードナーとして機能することを明らかにした(dppz-NH_2=7-アミノジピリド[3,2-a:2',3'-c]フェナジン)。 以上の結果から、新規なポリピリジル蛍光物質であるtpyが、特異かつ有用な光機能性を持ち、新規な機能性有機蛍光物質として大きな将来性を有することを明らかにした。
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