研究概要 |
2,2':6',2"-テルピリジル(tpy)について、環窒素のオルト位をアミノ置換することにより、高効率の蛍光発現(〜380nm)を実現した。特に6-アミノ体の量子収率(Φ)は0.70と非常に大きな値であった。一方、4'-アミノ体はΦ<0.01であった。以上のことから、アミノ基を適切な位置に導入することで、高輝度の蛍光性tpyを開発することに成功した。 種々の置換基を検討したところ、4'-フェニルtpyが効率よい蛍光(Φ〜0.3)を示すことを見出した。フェニル基のパラ位を置換し、蛍光チューニングを検討した。吸収・蛍光スペクトルの溶媒依存性および分子軌道計算より、強い電子供与性基の導入の結果、HOMO-1がHOMOを越えることが示唆された。分子軌道レベル制御を通じて蛍光をチューニングした例は皆無であり、この成果は、より戦略的な蛍光特性設計への足がかりとなる。 置換基導入によらず、bpyに蛍光性を付与する方法として、既知の蛍光性化合物2-アミノフェナジンとbpyを縮環させた分子構造を持つ、7-アミノジピリド[3,2-a:2',3'-c]フェナジン(dppz-NH_2)を合成した。その結果、効率よい蛍光を発現し、新しい分子設計指針の有効性を確認した。またdppz-NH_2は、二価金属イオンに対する選択的キレート形成ならびに蛍光応答性を示したことから、機能性有機蛍光物質としての可能性を明らかにできた。さらにルテニウム錯体[Ru(bpy)_2(dppz-NH_2)]^<2+>が、反応活性なアミノ基を利用してさまざまなアクセプターと容易に結合可能なこと、高効率の新規光増感ユニットとなることを確認し、その有用性を提示した。 以上、ポリピリジル骨格を持つ新規蛍光性化合物の開発に成功した。さらにこれらの化合物が特異な光機能を示し、光機能性有機蛍光物質として大きな将来性を有することを明らかにした。
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