研究概要 |
研究代表者は、今年度までに、低原子価パラジウム錯体による有機化合物の炭素-酸素結合活性化に関する錯体化学的基礎研究をおこない、得られる知見に基づいて新規な触媒プロセスを開発する研究を展開した。 1.鎖状あるいは環状のカルボン酸無水物が、O価パラジウム錯体にC-O結合の切断を伴って酸化的付加し、アシル(カルボキシラト)パラジウム錯体を与え、この錯体を水素化分解するとアルデヒドとカルボン酸が生成するという研究結果を触媒反応へ発展させることにより、カルボン酸をパラジウム錯体と酸無水物存在下に液相水素化するとアルデヒドへ部分還元されるという新規な触媒反応の開発に成功した。この反応は既存の類似反応に比べて、高収率かつ高選択的に反応が進行するという特徴がある。この反応の最適条件について検討したところ、反応溶媒としてはアセトンなどの極性溶媒が好ましく、また、パラジウム錯体の配位子として、トリ(p-トリル)ホスフィンを用いた場合、反応が速やかに進行することがわかった。このほか、反応後に回収可能なパラジウム固体触媒を用いてもこの反応が進行することを確認した。 2.パラジウム錯体による炭素-酸素結合切断反応に関する錯体化学的研究においては、パラジウムO価錯体に対してケテン二量体を反応させると、室温下で速やかにケテン二量体の炭素-酸素単結合が切断され、対応する酸化的付加生成物であるパラダサイクル型の錯体が生成することを見出し、この錯体のX線結晶構造解析に成功した。さらに、このパラダサイクル錯体の反応性についても詳しく検討した。 3.パラジウム錯体触媒によるアミン類の酸化的カルボニル化反応について検討を行った。その結果、空気酸化などの他の酸化剤に比べて、1, 4-ジクロロ-2-ブテンを酸化剤として用いた場合、カルボニル化反応成績体であるオキサミドが高収率で得られることがわかった。
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