研究概要 |
超分子型高分子として、2種類のリングを有するポリロタクサンの合成を試みた。2種類のリングとして、α-シクロデキストリン(α-CD)とナフタレン修飾α-CD(NpCD)を選び、まず、両端にアミノ基を有するポリエチレングリコール(分子量約2000)との間で疑似ポリロタクサンをつくり、その後、2,4,6-トリニトロフェニルスルホン酸と末端アミノ基とを反応させ末端に2,4,6-トリニトロフェニルを導入した。反応に際してNpCDの割合を20、40、60、80、100%としたところ、得られたポリロタクサン中のNpCDの割合は20.3、40.0、56.1、80.0、100%であった。そして、ポリロタクサン中に導入されたα-CDとNpCDの合計数はそれぞれ13.8、11.7、11.4、10.5、9.9個であった。また、そのうちのNpCDは2.8、4.7、6.4、8.4、9.9個となった。この結果は、原料中のα-CDの数が多いほど、ポリロタクサン中に繰り込まれるCD単位の個数が増大することを示している。得られたポリロタクサンについて蛍光寿命測定を行なったところ、0.1-0.2、1.6-1.9、3.9-4.2nsの3成分の寿命が観察された。NpCD単独の場合の蛍光寿命は2.3nsと6.5nsの2成分であり、後者の長寿命成分はナフチル単位がCD空孔内に包接された自己包接錯体のものであり、前者の短寿命成分はナフチル単位が空孔外に出て水環境にさらされている状態に対応している。そこで、3成分寿命のうち中問の寿命は水にさらされている種のものであり、最も短い寿命成分はナフチル単位から末端のトリニトロフェニルヘのエネルギー移動を、最も長い寿命成分はナフチル基間のエネルギー移動を反映していると推測した。
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