研究概要 |
C_<60>をはじめとするフラーレン類は、可視光を照射すると一重項酸素を発主して、細胞毒性などの生物機能を発現することが知られている。本研究は、糖鎖とフラーレンを結合した高分子を調製することにより、フラーレンを水に可溶化するとともに、糖鎖の認識機能を利用して特定の組織に選択的に作用して、フラーレンの生物機能を効率的に発揮するような機能性分子の設計を目的として行った。 まず、アセチル基で保護された1-アジド化糖の環化付加を用いて糖鎖フラーレンを合成する手法を確立した。C60に対して1.5倍量の1-アジド-2,3,4,6-テトラアセチルグルコースを用いて、窒素雰囲気下クロロベンゼン中で10時問加熱還流することにより、対応する1:1付加体を消費C_<60>を基準にして57%で得ることができた。FAB-MSにより1:1付加体であることを確認した。^1H-NMR及び^<13>C-NMRの測定により、2種類の異性体からなっていることを見つけた。HPLCで単離できたので、特性解析を行って、アザフラロイドおよびアジリジノフラーレン構造をもつことを明らかにした。 次に、重合官能基としてアリル基を導入し、糖鎖結合ビニルモノマー、およびアクリルアミドとともにラジカル共重合させた。共重合体は、フラーレンの有無に拘わらずレクチンに対する強い認識能を発現した。糖鎖中に組み込んだフラーレンが、本来のDNA切断機能を維持していることを明らかにした。一重項酸素の消去剤(NaN_3)の添加することにより切断が阻害されることから、一重項酸素の生成によりDNAの切断が進むことを明らかにした。b-ガラクトシダーゼを用いてポリマー中のラクトースの加水分解を行ったところ、光を照射しない条件ではフラーレンは加水分解反応に影響を及ぼさないが、光を照射すると加水分解が抑制されることを見出した。糖鎖をもたないフラーレンは、可視光の照射により細胞殺傷作用を発揮することを見つけた。一方では、糖鎖をもつフラーレンでは細胞殺傷作用が抑制されることを明らかにした。このように、糖鎖およびフラーレンが相乗的に作用した興味深い実験結果を得ることができた。
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