マルチペプチド合成機を購入し、ミオシン軽鎖キナーゼ、カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ-I、-II、-IVおよびカルシニューリンのカルモデュリン結合部位ペプチド(標的ペプチド)を多数改変して合成し、カルモデュリンとの複合体の構造解析を放射光小角散乱とプロテインデータバンクの原子座標に基づき行った。カルモデュリンの標的分子認識モチーフとして、ミオシン軽鎖キナーゼ系ペプチドは1例を除いて1-5-8-14モチーフに従うことが示された。このモチーフに従うカルモデュリン/標的ペプチド複合体のCa^<2+>滴定の結果は構造変化が4Ca^<2+>で終了することが示された。これに対し、1例であるが、5-8-14モチーフでもカルモデュリンとコンパクトな球状複合体を形成するものが見いだされた。この標的ペプチドの特徴は、N末端側の3の位置にリジンが配置しており、この残基がアンカー的役割を演じることが示唆された。また、この場合のCa^<2+>滴定の結果は構造変化が3Ca^<2+>で終了することが示された。これらの結果からCa^<2+>滴定により分子認識のモチーフが識別できることが示唆された。プロテインキナーゼ-Iと-II系の標的ペプチドはいずれも1-5-10モチーフで分子認識されるが、プロテインキナーゼ-IV系の標的ペプチドはシーケンスに依存して1-5-10または1-5-8-14モチーフで記述されることが示された。また、Ca^<2+>滴定の結果から前者のモチーフは3Ca^<2+>で、後者は4Ca^<2+>で構造変化が終了することが示された。カルシニューリン系標的ペプチドは、おおむね1-5-8-14モチーフに従うが例外の最も多い系であった。これら例外の間に共通性が見られなかった。さらにカルモデュリンをトリプシン分解したフラグメントについて中心へリックス部の役割が明らかにされた。
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