| 研究概要 |
これまでに,液晶中にフォトクロミック分子(アゾベンゼン誘導体など)を分散あるいは液晶分子自身に光応答性を付与し,それらの光化学反応(分子形状変化)を利用した液晶の光駆動に関する研究を行ってきた。レーザー光によって液晶の配向状態を約200マイクロ秒で高速に,しかも可逆的に制御することが可能である。このような光誘起配向変化(光誘起屈折率変化)を利用した,光スイッチング素子や二次元光記録素子を考案してきた。高速光応答性・記録保存安定性とを合わせもつ光応答液晶を用い,光の干渉によって液晶材料中に屈折率変化を周期的に誘起(すなわちホログラム形成)することができれば,光の回折現象を利用した三次元光記録や動的ホログラム(三次元動画)を実現できる可能性がある。特に動的ホログラムでは,従来の記録材料と異なり三次元光情報の"書き込み","読み出し"および"消去"を実時間で行う必要がある。そこで本研究では,大きな光誘起屈折率変化,速い光誘起屈折率変化を示す液晶材料を開発し,動的ホログラムへの展開を試みた。合成したアゾベンゼンを側鎖に有する新規高分子液晶の薄膜にアルゴンイオンレーザー(488nm)の干渉光を照射すると,周期的な配向変化(屈折率変化)が起こり回折格子が形成されることを見いだした。この回折格子は光照射のオン-オフにより約150ミリ秒で形成・消去することができ,動的ホログラムとして機能することが明らかとなった。また,回折格子形成に及ぼす格子周期の影響を検討した結果,高い分解能(700本/mm)を示すことがわかった。
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