研究概要 |
昨年度までに,側鎖にアゾベンゼン部位を有する光応答性高分子液晶フィルムに二光束のコヒーレント光を照射することによって,干渉縞の明部でのみ液晶相から等方相への相転移を引き起こし,周期的な屈折率分布に基づく位相型ホログラムが形成できることを見いだした。本年度は,高分子アゾベンゼン液晶の書換型ホログラム記録材料への応用展開を目指して,回折格子の形成メカニズムについて検討するとともに,記録密度,回折効率および書込時間などの諸特性を指標として,高分子アゾベンゼン液晶の記録媒体としての潜在的能力を評価した。 高分子アゾベンゼン液晶のポリマーフイルム(500nm厚)を調製し,これにTg以下の室温でAr^+レーザーの488nmの干渉光を照射した結果,周期的な相構造変化(屈折率変化)が起こり,回折格子が形成できることを確認した。格子間隔は1μmであり,これは商用光ディスクを上回る400メガビット/cm^2以上の記録密度に相当する。記録された回折格子の複屈折および表面形状を調べた結果,誘起された屈折率変化はレリーフ構造にはほとんど影響されず,液晶相と等方相の周期的な配置に本質的に由来することがわかった。また,高分子アゾベンゼン液晶の分子構造および光学系を最適化することによって,回析効率28%(理論値33%),書込時間60ミリ秒を達成することができた。さらに,実際に二次元,三次元(立体)物体の画像記録を試み,肉眼でも非常に高コントラスト・高い解像度で記録画像を認識できることが明らかとなった。本系の場合,ホログラム形成は光応答分子の光化学反応に基づくため,高い空間分解能ばかりでなく,高選択性と高感度化を同時に達成できることが期待できる。
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