研究概要 |
ポリビニルアルコール(PVA)ゲルの一軸および二軸伸長変形挙動と流れによる体積変化挙動を調べた.実験には平均重合度1700のPVAを用いた.PVAをジメチルスルフォキシド(DMSO)と水(W)の混合溶媒(DMSO:W=80:20)に溶解した後,所定の型に溶液を流し込み,低温でゲル化させることによりPVAゲルを作製した.混合溶媒で膨潤したゲルを脱イオン水中に静置するすることで,溶媒を混合溶媒から水に交換した.円筒状PVAゲルの内側に圧力を印加してゲルに二軸伸長変形を印加するとゲルの体積は増加した.ゲルを膨潤させることのない流体を用いて圧力を印加した場合,ゲルの体積増加の割合は小さく,ゲルの体積変化はゲルの物質定数としてのポアソン比で体積変形量が決まることがわかった.一方,ゲルの溶媒となる流体で圧力を印加すると,ゲルの体積増加の割合は非溶媒で圧力を加えた場合よりもかなり大きくなることがわかった.これは,後者の場合にはゲル中の溶媒流れが体積増加に大きな影響を与えているためである.すなわち,流れ場中のゲルの体積は材料定数としてのポアソン比で規定される体積増加のみならず,ゲル中を流れる流体の圧によるゲルの膨潤にも大きく影響を受けている.この場合のゲルの体積変化は主に平衡ポアソン比で決まり,体積増加量は印加した圧力に比例することもわかった.円筒状ゲル試料を用いた二軸伸長実験では,試料の動径方向の応力は均一ではない.また,流れにより生じる流体圧にも一様ではない圧力分布が現れることがわかった.これらの応力および圧力分布の非一様性から,ゲルの体積変化は不均一であり,円筒の内側から外側に向かい体積増加量が減少することが明らかになった.
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