研究概要 |
ダメッジトレラント設計(耐損傷設計)とは,使用中の検査補修,モニタリングなど保守管理体制を考慮に入れた設計を行うことにより,構造物の一層の安全性向上と経済的効果ねらう設計法である。本研究では船体構造を対象に,ダメッジトレラント設計の導入の可能性を以下の4項目について検討した。 1)船体構造検査支援システムと検査の最適化の研究: 遺伝的アルゴリズムを用いた構造部物の検査の最適化手法を提案した。また,計算機内部で仮想的な船体検査を実施し,検査活動を支援するためのシステム化技術について研究した。 2)構造物の疲労損傷予知と応力モニタリングのための犠牲試験片の開発: 構造部材に長期に作用する変動応力を,構造モニタリングによって収集する目的で高感度犠牲試験片を開発した。構造物の受ける変動応力履歴を犠牲試験片に疲労損傷として蓄積し,犠牲試験片に生じた疲労損傷状況から構造物の長期応力度を推定するものである。この研究では下記に示す特許を取得した。 3)圧電素子を用いた簡易型の応力履歴センサーの開発: 構造物に働く応力の大まかな値を一目で分かるように表示する機能と,設定した応力レベルを測定期間中に超過した回数を記録する機能を有する簡易型の応力履歴センサーを開発した。センサーはタバコの箱程度の大きさのアルミケースに納められており,内部は応力を検出する圧電素子と信号処理のための電子回路,および電池で構成されている。 4)微小欠陥の強度評価法の研究: 従来の線形破壊力学に基づく亀裂の強評価法は,寸法が小さい微小亀裂については精度が悪いことを指摘した。次に,亀裂近傍の厳密応力分布に基づいて領域被害モデルを提案した。このモデルを用いると亀裂寸法によらず亀裂の強度評価を高い精度で行なうことができる。
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