研究課題/領域番号 |
10450383
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉成 仁志 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (20167737)
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研究分担者 |
金田 重裕 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90010892)
影山 和郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50214276)
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キーワード | 3%Si鋼 / 疲労き裂伝播 / 活動すべり系 / 結晶粒界 / 多重すべり |
研究概要 |
昨年度は、銅単結晶材(fcc系)を供試した疲労き裂伝播試験を行い種々の有用な知見を得たが、本年度は、その成果の次のステップとして、結晶粒界の影響を検討するため、3%Si鋼(bcc系)を用いた疲労き裂伝播試験を実施した。 供試材は粗大結晶粒を有し、試験片は結晶粒2個程度より構成されており、安定き裂成長中に結晶粒界を疲労き裂が横切るようにした。5体の疲労試験を行い、その後SEMによる破面観察を実施した。 その結果、 1)3%Si鋼(bcc系)の場合は、銅単結晶材(fcc系)と異なり、特定の1つのすべり面をすべるのではなく、シュミット因子の大きさが同程度の面を複数同時にすべるという多重すべりのメカニズムに従っているようであり、SEMによる破面観察結果より、ストライエーション状模様のパターンが2つのすべり面の交線となって現れることを確認した。 2)3%Si鋼でも、結晶方位によってda/dNと△Kの関係が異なりParis則が成立せず、銅単結晶材と同様、き裂伝播における第I段階の様相を示していると考えられる。 3)結晶粒界の影響については、隣り合う結晶の方位が同様の場合には、巨視的な速度の変化も少なく、SEM観察でも粒界前後でなめらかに伝播が進行しているが、隣り合う粒の方位が著しく異なる場合には、伝播速度に変化が現れ、破面は、巨視的にも微視的にも様相が大きく変化することが分かった。また、この変化は、主き裂先端の塑性域が粒界に当たると影響が出始めることが明らかとなった。すなわち、粒界の影響は、隣り合う結晶粒の方位関係と、主き裂先端塑性域の大きさに強く依存することが推測される。 以上の成果は、疲労破壊の微視的メカニズムを探る上での大きな前進と考えられる。
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