研究分担者 |
肥後 靖 広島大学, 工学部, 助教授 (20156582)
土井 康明 広島大学, 工学部, 助教授 (10134454)
馬場 榮一 広島大学, 工学部, 教授 (30274129)
二宮 伸治 広島国際大学, 保健医療学部, 助教授 (60237774)
岩下 英嗣 広島大学, 工学部, 助教授 (60223393)
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研究概要 |
最終年度に当たる本年度は,沿岸域における砕波による海浜への海水浸透現象とそのメカニズムを把握するために,主に数値シミュレーションを用いて非線形波動による浸透現象の調査を行った。本年度の研究を通して得られた結果は次のようになる。 まず,昨年度までの実験結果より,海浜への浸透現象は海浜における非線形波動が駆動力となっていることが分かった。そこで,この非線形波動による定常圧力をWave Set-upとSet-downの概念から導出し,昨年度までに実施した海浜表面定常圧力分布の計測値と比較した結果,良好な一致を得た。即ち,海浜の浸透水拳動は,砕波による海浜の平均水位の変化と密接に結びついていることが確認できた。次に,上記非線形波動理論に基づいて導出された海浜表面定常圧力分布を境界条件とする二次元差分法による海浜への浸透水の数値シミュレーションを行い,その結果と前年度実施した可視化実験による浸透水流れを比較した結果,良好な一致を得た。 以上の知見から,海浜における海水の浸透現象は,海浜域における砕波による平均水位の変化がドライビングフォースとなり,海水の海浜内における循環を引き起こしていると判断される。従って,Wave Set-up,Set-downの起点となる砕波点と波の駆け上がり点が明確になれば,海浜の海水浸透挙動が推定できる。 この観点から,本年度は波浪条件,海浜傾斜条件等を変えて砕波点,波の駆け上がり点を計測する実験を実施し、土木分野で使用されているこれらの位置を推定する実験式が使用できるかどうかの検討を行った結果,定性的な傾向が把握できることが判明した。そこで,本年度開発した前記数値シミュレーションプログラムを用い,海浜傾斜角が海水循環に与える影響を調査し傾斜角が小さいときに海水の浸透面積は増大し,大きいときに浸透速度が増大することを示した。循環海水が海浜に生息する生物に栄養及び酸素を供給していることを考えると、海水は海浜内部に-定時間滞留する必要があると思われ,上記の結果は,海浜内部の生物環境の観点から最適な傾斜角が存在することを示唆している。 また、傾斜角が大きいとき、波崩れ位置での流れの吸上げ力が大きく、シルトなど微小粒子の土壌からの流出が大きいことも実験的に判明した。これは、土壌内シルト含有率と相関の強いバクテリアの個数が減少することに対応しており、土壌内生物活動に傾斜角が影響することも分かった。 これまで十分に知られていなかった沿岸土壌内の流動性状が本研究で明らかにされたことは、沿岸エコシステムの理解とその保全にとって重要な知見を与える。
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