天然岩石中に発達するき裂のフラクタルモデルの構築のためには、天然き裂情報を正確に取得し、き裂のキャラクタリゼーションとフラクタルモデルのための情報を的確に抽出する必要がある。本年度は、岩石試料およびボーリングコア中のき裂画像を取得する画像取得装置(コア・スキャナー)を開発した。従来、我々が開発したコア・スキャナーはモノクロ画像でしかもコアの長さは30cmに制限されていた。本研究で新たに開発したコア・スキャナーはカラー画像の取得が可能であるとともに、コア直径は15cmまで、またコアの長さは1mまで計測できる。さらに、画像解析と画像出力装置の改善により、岩石き裂情報の高密度ディジタル化と精密画像の取得が可能となった。これらによって、採取可能な大きさの岩石試料中に発達するき裂の精密画像を記録できるとともに、露頭規模におけるき裂ネットワークを原位置観察結果をディジタル保存し、室内での解析に用いることが可能となった。現在、これらの新開発装置を用いて、主として花崗岩中の天然き裂ネットワークの特徴付けとき裂特性のデータベースを構築しつつある。 一方、フラクタルモデル化手法の研究では、き裂の偏在性を考慮した解析方法を考案し、これに基づいてき裂ネットワークの計算機モデルを構築し、天然き裂ネットワークとの比較を行っている。特に、岩石の透水性に大きな影響をおよぼすき裂の連結性に着目し、連結性の評価方法を開発した。計算機モデルは、より少ないパラメータで2次元の模擬天然き裂ネットワークを発現することが可能となり、この計算機モデルと天然き裂ネットワークとを比較したところ、両者のフラクタル性やき裂連結特性は良好な一致を示した。今後、計算機モデルの次元拡張、およびボーリングコア、露頭観察等による天然き裂との比較をすすめ、スケールフリーなき裂ネットワークモデルを開発する予定である。
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