平成10〜12年度の研究で、Streptomyces levoris、Arthrobacter nicotianaeなどの微生物が優れたウラン、トリウム、銅などの重金属吸着能を持つこと、固定化柿タンニンが、バナジウム、クロムに対して高い親和性を示すことを見出し、これらの生体系物質が優れた重金属吸着剤として、水圏中有用金属元素の回収資源化、毒性金属元素の除去に利用できることを明らかにした。また、本研究費で購入した電子スピン共鳴装置を駆使して、これら吸着剤による重金属吸着機構を解析し、微生物菌体中のpHなどの微視的環境の変化が銅の化学的性状に影響を与えること、柿タンニンがバナジウムを還元したのち吸着することなどを明らかにした。さらに、これらの微生物やタンニンが、ウラン、銅、バナジウム-過酸化水素系で生成するヒドロキシラジカルの消長に及ぼす影響は、重金属マスキング効果と抗酸化効果によることを示し、これらの効果を生体系吸着剤のミクロキャラクタリゼーションに利用できることを明らかにした。一方、生体系重金属ストレスの評価解析を目途として、電子スピン共鳴法によるモデルラット中ラジカル種の解析を行い、マイクロダイアリーシス法によるESRオンライン計測、スピンプローブ法によるESRイメージング計測などの基礎技術を確立した。これと平行して、金などの重金属イオン存在下でのスピントラップ剤の反応特性を検討した。これらの成果は、23編の学術論文、33件の学会発表として公表した。
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