研究概要 |
第4染色体長腕末端領域に座乗するイネ科共通の特徴である葉舌を支配する遺伝子、Lg遺伝子についてイネのトウモロコシLg1相同遺伝子の構造を推定するとともに,イネのLg遺伝子座の突然変異を有する変異体のゲノミック配列を明らかにした.PCRにより決定されたイネのトウモロコシLg1相同遺伝子の5'側と3'側の配列と,Han et al.によって発表されたゲノミック配列のORFを組んでみると,推定されるアミノ酸は414残基で,トウモロコシより15残基多いものの,トウモロコシのLg1遺伝子が有するSBP1とSBP2のDNA結合ドメインは100%同じであった.このアミノ酸配列から,イネのLgの遺伝子構造は3個のエクソンからなっていると推定された. Lg座の突然変異体について,Lg遺伝子3635塩基について解析を行った.その結果,葉舌を有するT-65はGuang Lu Ai-4の配列とほとんど同じであった,一方,葉舌を持たないT-65lgの配列もT-65と100%同じであった.葉舌はできるものの非常に短くなる85ACC152 lg-aは第1エクソンと第1イントロンの間のスプライスサイトでTがCと変異していた.また,YH lgは第1イントロンと第2エクソンのスプライスサイトのGがAに変異し,第2イントロンのTCの反復配列が1組増加していた.85ACC152 lg-aとYH lgはいずれもスプライスサイトの塩基配列に変異があることが明らかになったものの,T-65 lgでは解析した配列中には変異が認められず,この配列の上流側に変異がある可能性が考えられた. インド型イネl-102の第4染色体長腕末端にはアントシアニン着色を制御する紫葉遺伝子(Pl),無葉舌遺伝子(Lg)とフェノール反応遺伝子(Ph)が座乗しており,これらの形態形質マーカーを用いた通常の交雑により,Pl-lg-Ph領域をT-65 lgに移入した.育成過程でBC7F1,BC8F1およびBC9F1における各個体は種子不稔を示した.分析の結果,不稔にはl-102の細胞質が関係していることが推定された.さらに、BC10F2におけるlg形質の異常分離が観察され、BC10F1において低稔性個体出現はl-102の細胞質とlg遺伝子と連鎖する稔性回復遺伝子が関与しているものと推定された.
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