研究概要 |
サツマイモ生産の改善にはシンク能の改良が効果的であること,またシンク能はデンプン合成代謝関連酵素の一つであるADP-グルコースピロホスホリラーゼ(AGPase)の活性によって支配されることが知られている.申請者らは塊根内のAGPase活性が光合成生産にともなって変化することを明らかにしており,シンク能がソース能の制御因子になることが推察される.本研究では,植物体にスクロース溶液(人工ソース)を供与した場合の塊根内のAGPase活性と塊根乾物重の反応を調査し,塊根生産に及ぼすシンク能とソース能の影響について検討した.供試材料にはサツマイモ品種の高系14号を用い,土耕ポット栽培を行った.根の活着が確認された移植後10日目に茎を地際から2節残した状態で切断し,その切断部とガラス管とをシリコンチューブで繋ぎ,速やかにガラス管にスクロース溶液を充填させて植物体へのスクロースの供与を開始した.スクロース溶液濃度は0%(蒸留水),6%および12%とした.処理後28日目の塊根乾物重は対照区と比較して6%区では2.3倍,12%区では3.1倍の値となった.植物体に供給するスクロース溶液の処理濃度が高くなるほど光合成速度が低下し,それは主に葉肉伝導度の低下に起因するものであった.このようにスクロース供給によって,葉身の光合成能力は低下するが,塊根乾物重は増加し,スクロース溶液の供給は塊根肥大に有効に作用した.シンク能を司るとされる塊根内のAGPase活性を測定した結果,対照区の0.68unit gFW-1に対して6%区および12%区ではそれぞれ0.86unit gFW-1,0.85unit gFW-1であり,有意に高い値を示した.本酵素の活性は主要転流物質であるスクロースによって誘導されることが明らかであり,ソース能の向上によってシンク能を高め得ることが示唆された.
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