研究概要 |
サツマイモの塊根生産(シンク能)はデンプン合成代謝関連酵素の一つであるADP-グルコースピロホスホリラーゼ(AGPase)の活性によって支配されることが知られている.昨年度には,植物体に人工ソースとしてスクロースを注入するとAGPaseの活性増加や塊根肥大に顕著な効果があることを明らかにする中で,塊根生産に及ぼすシンク能とソース能の影響を考察した.本年度は,処理を増やしスクロース,グルコース,フルクトースの3種類の糖を人工ソースとして植物体に給与して反応を調査した.供試材料には品種コガネセンガンを用い,土耕ポット栽培中の2葉挿し植物体に糖溶液濃度を変えて植物体に給与した.給与方法は昨年と同様であり,茎切断部にガラス管を繋ぎ,ガラス管中の溶液を供与した.3種の糖溶液が塊根肥大に及ぼす効果を比較すると,濃度による差もあるが,スクロースの効果が大きく,ついでグルコースであり,フルクトースの効果は小さかった.スクロースでは12%溶液の効果が高かったのに対して,グルコースでは薄い溶液(1%)での効果が大きく注目された.植物体中を移動する光合成産物はスクロースが主体であるが,グルコースでも強い効果が示されたため,その機作の解明に関心が持たれる.AGPaseも塊根肥大と同様に,スクロースとグルコースの給与によって活性が上昇した.得られた成果は日本並びにドイツの作物学会等に発表した.
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