研究概要 |
カンショの生産性を飛躍的に高めるには,シンク能の遺伝的改良を進めることが効果的であるとされているが,本研究では,まず,シンク能決定の主要因とされるデンプン合成関連要酵素の活性の発現,調節には,光合成産物であるスクロースが深く関わっており,シンクの機能の開始を決定する鍵はソース側にあることを予測した.ついで,種々の糖溶液の人工給与実験から,デンプン合成系における主要酵素の発現,活性化にはスクロース以外,フルクトースやグルコースの給与が効果的であることを実証し,塊根肥大の基礎として酵素(AGPase等)の活性化における糖の役割の重要性を明確にした.さらに,本研究補助金で購入した13C分析計を活用し,給与した糖の植物体各器官への輸送状況を把握した.その結果,塊根における糖濃度の上昇がデンプン合成関連酵素の活性化の引き金となって塊根のシンク機能を向上させ,これによって個葉光合成速度が増加し,最終的に塊根のデンプン生産量が増収するシステム(シンク・ソース関係)が明らかとなった.このように研究開始当初の予測を実験的に立証することができた.この研究は,従来のシンク・ソース関係の解析実験に対して新しい視点を与えるものであり,これらの結果は,酵素活性を育種的あるいは栽培技術的に調節,向上させるための基礎情報を提供するものである.カンショに限らずデンプン生産作物の物質生産や収量生産の解明における理解を深めたものと考えられる.これらの業績を国際学会誌2報と国内誌1報に論文として公表した.
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