アントシアニン合成について光依存型の植物と非依存型植物とでその調節機構を比較することにより、アントシアニンを光非依存的に発現させる方法を探ることを目的とした。 果実の着色が光依存的であるイチゴ'とよのか'において、果実の発育にともなうアントシアニンの蓄積とアントシアニン合成に関わる数種の遺伝子の発現を調べた。'女峰'の場合と同様、開花3週間後に白熟期に達しこの時期からアントシアニンの蓄積が始まった。この間、PALとCHS遺伝子の発現が一定であったのに対し、DFR遺伝子の発現は着色にともなって増加した。このことは、'とよのか'においてもDFRの発現がアントシアニン合成の調節に関与することを示唆した。 また、'女峰'と'とよのか'において、果実白色期に果実をアルミホイルで覆いその後のアントシアニン合成と各遺伝子の発現を調べた。HPLC分析の結果、主に5種類のアントシアニン(An1、An2、An3、An4、An5)が検出された。各アントシアニンを回収し、精製して同定した結果、An2およびAn4はペラルゴニジン型のアントシアニンであり、An5はシアニジン型のアントシアニンであった。'女峰'では70%以上がAn2であり、An4と5があわせて約25%含まれていた。一方、'とよのか'では90%以上がAn2で、少量のAn3が含まれていた。両品種で主要なアントシアニンはAn2であり、この含量は両品種で遮光処理により減少した。前年度の結果と異なり、'女峰'においてもアントシアニン含量は遮光によって低下した。'女峰'では遮光しても十分量のアントシアニンが合成されるため外観が光非依存的であったと考えられる。また、PAL、CHS、DFRの発現量に対する光の影響はまったく見られなかった。DFRは果実発育にともなうアントシアニン合成の調節には関与していても光依存性には関与していないと考えられる。
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