研究概要 |
1. 従来から形態的特性の情報を収集してきたが,断片的であった.今年度から体系立ててミカン亜科植物の特性を収集し,データベース化して,インターネットにリンクするための研究を開始した. 2. 佐賀大学で保存しているミカン亜科植物10属38種を用いて,果実の縦経,横経,重さ,じょうのう数,砂じょうの有無,果実あたりの含核数及び種子の重量を調査した.種子の採集が可能な材料に関しては,カンキツとして重要な特性である多胚性の調査も行った.形態的特性は,すべて画像化し,コンピュータに取り込みデータベースとして保存した. 3. 21属46種のミカン亜科植物を用いて走査型電子顕微鏡により気孔の形態を調査した.オーストラリア原産のEremocitrus glaucaの気孔は葉の表皮が陥没した部位に存在し,他のミカン亜科植物とと比べ極めて特異的な形態であった.気孔の形態は系統分類の指標のひとつとなると同時に,原産地や栽培環境を知るための手がかりになることを明らかにした. 4. 遺伝資源拡大のために東南アジア原産のAegle marmelosの葉片及び茎切片からカルスを誘導した.形態形成には到っていないが,大量増殖やプロトプラスト融合のための材料とするため可能性の検討を開始した. 5. ミカン亜科植物の化学分類を行うために逆相系高速液体クロマトグラフィーを用い,フラボノイド類の検索を行った.既知のフラボノイドは検出できなかった.ヘスペリジンなどのケモタキソノミー物質についても検討を行う必要がある. 6. Juvenile期間が短いマメキンカンを用いてショ糖リン酸合成酵素遺伝子の導入に関して調査した.実生の胚軸を用いてAgarobacteriumにより遺伝子導入をはかり,PCRとサザンハイブリゼーションで導入を確認した. 7. 本研究で得られた情報を国立遺伝学研究所の遺伝資源に関するデータベース「SHIGEN」とリンクするよう調整を行った.
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