研究概要 |
1.昨年に引き続き,ミカン亜科植物の形態的特性の情報を収集し,データベース化し,インターネットにリンクするための研究を行った。形態的特性は,画像化し,コンピューターに取り込みデータベースとして保存した。これらの情報は,http://citrus.ag.saga-u.ac.jpを通してアクセスが可能である。 2.沖縄の在来カンキツであるシークワーシャ9系統,及び我が国の基幹的台木であるカラタチの系統分類に関し形態的及び生化学的研究を行った。分類の指標には花器の形態,花粉粒の形態,葉の精油成分,葉のアイソザイムを用いた。伝統的に異種として分類されていた系統が同種であることを明らかにした。また無核シークワーシャは他の系統と大きく異なった。カラタチ7系統は形態的には異なるが,生化学的調査では変異が少なく,来歴についても不明な点が多かった。 3.カラタチ,サワーオレンジ,ユズを材料として,接ぎ木によるわい化程度の調査を行った。茎の横断面の皮層部と木質部の比率とわい化程度との相関を求めた。実生の1〜2年生では高い相関が見られたが,年を追うごとに相関は低くなった。 4.東南アジア原産のベルノキ(Aegle marmelos)の葉片及び茎切片からカルスを誘導した.3ヶ月を越える培養により不定芽の形成が見られた。しかし,カルスのみの培養では褐変が起こり長期培養は困難であった。培地組成に関した検討が必要である。 5.ミカン属の化学分類を行うために逆相系高速液体クロマトグラフィーでフラボノイド類の検索を行った。ヘスペリジンとデオスミンを指標として有望であることがわかった。デオスミンはレモンとライムのみで見られた物質である。本物質は発ガン抑制物質として有望であり,他のカンキツ類での分布の調査を進める。 6.インドで平成11年11月に開催された「国際カンキツシンポジウム」においてカンキツ類遺伝資源の保存と維持に関する報告を行った。
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