研究概要 |
1.昨年に引き続き,ミカン亜科植物の形態的特性の情報を収集し,データベース化の充実を図り,国立遺伝学研究所の「SHIGEN」とリンクするための検討をさらに進めた。 2.カンキツ類19品種を用い種子中のリモンニンの定量と定性を高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。カンキツ属とカラタチ属の品種にはリモニンが含まれていたが、キンカン属及びキンカン属とミカン属との自然交雑と言われているシキキツにはリモニンが含まれていなかった。果実の成長に伴うリモニンの経時的変化を解析したところ系統分類の手法として利用が可能であることを確認した。 3.カンキツ属14品種とキンカン属果実の果皮及び果肉のメタノール抽出物中のフラボノイド化合物を高速液体クロマトグラフィーで分析した。ブンタン及びニンポウキンカンではhesperidinが含まれていないことを明らかにした。HPLCクロマトパターンは品種に固有であり、品種の推定も可能である。 4.ミカン亜科植物8属9種の実生苗からカルスを誘導し、そのカルスを試験管内で接触させ、接ぎ木初期のカルス細胞の挙動に関して形態的調査を行った。近縁のカルスが接触した時には接触面が明確でなかったが、異属のカルスが接触した時には境界面に細胞の崩壊と木質化が見られた。体細胞を用いての自己認識の現象を確認できると同時に系統分類の指標のひとつとなりうる。 5.熱帯原産のミカン亜科植物の種子のリカルシトランシーに関して調査を行い、種子を果実から取り出し、6週間乾燥条件におくと発芽能力は急激に減少した。逆にキンカン属植物は乾燥に対して抵抗性が高いことを明らかにした。リカルシトラント種子は子葉に含まれるデンプンの糖へ変換が鈍いようである。 6.鹿児島県産桜島小ミカン2系統、マレイシア産Glycosmis属及びCitrus属を収集し、系統分類と変異の幅を調査するために育成している。
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