研究概要 |
昆虫の幼若ホルモン(JH)は変態・休眠・相変異・性成塾などを調節する重要なホルモンである。このホルモンの作用機構については分子レベルの解析が進められ、これらの現象に関連する遺伝子の発現の調節に関わっていることが明らかにされつつある。しかし、いまだこのホルモンの受容体は同定・単離されておらず、作用機構の全貌が明らかにされるに至ってはいない。 JHが変態の調節においてエクダイソン作用の阻害・修飾という作用を持っていることがいくつかの現象から判っており、この研究ではエクダイソンとエクダイソンリセプター EcRやそのパートナーであるUSP及びそれらによって誘導されるいわゆるearly geneや early-late geneを含む核因子を解析した。その過程で、DNA結合ドメインを持つ新規な核受容体遺伝子GRF(GCNF related factor)のクローニングに成功した。この遺伝子はエクジソン濃度に同調して各組織での発現が確認され、結合するDNA配列も明らかにした。また、これら核受容因子と一般転写因子との間を取り持つコファクター Bx42及びGCN5をクローニングした。ほ乳類培養細胞にEcR/USP発現コンストラクトと共に、luciferaseの上流域にEcRE(応答配列)をつないだレポターコンストラクトをcotransfectionし、エクダイソンにより発現が活性化される系を確立した。この系に、Bx42,GCN5の発現コンストラクトを導入することで、レポーター遺伝子の発現が増強されることを示した。 今後この系を用いて、エクダイソンによるレポーター遺伝子の発現のJHによる制御について評価し、JHの関与する因子を探索する。このアプローチによってJH受容体候補となる因子の同定が出来るものと考えている。
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