研究課題/領域番号 |
10460021
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高藤 晃雄 京都大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50026598)
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研究分担者 |
日本 典秀 農林水産省, 昆虫農業技術研究所・遺伝育種部, 研究員
矢野 修一 京都大学, 大学院・農学研究科, 助手 (30273494)
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キーワード | カンザワハダニ / DNAsequence / 休眠性 / 遺伝的変異 / 系統分化 |
研究概要 |
主に日本産カンザワハダニ個体群・系統を対象として、1)個体群・系統間の遺伝的変異(DNA sequences)および2)適応的変異として休眠性の地理的および奇主による変異を調べた。 1)遺伝的:カンザワハダニには互いに生殖不和合成を示す2つのタイプ(TとK)が存在し、最近、前者はニセカンザワハダニとしてカンザワハダニから分離された。今回、日本各地から採集した個体群について交配実験によりTとKの識別を試みたところ、17系統中、5系統では両者が混在し、野外では両者が混在することが示された。さらに核ゲノムの上のITS1領域およびミトコンドリアのCOI部分領域のDNA塩基配列を用いて系統樹を作成すると、いずれの領域でも2つのタイプは明確に分離されなかった。さらにKは多系統で、一方TはKの一部から派生したものであり、2タイプ(種)は分化の途上にあると判断された。 2)休眠性の変異:カンザワハダニは広食性でクサギなどの落葉性奇主だけでなく、常緑のチャでも発生する。日本各地の個体群について休眠性を調べると、奥久島以北の個体群では18℃以下の誘起温度では90%以上が休眠発現した。しかし沖縄本島個体群では休眠性が弱くなり、石垣・西表ではほぼ完全な非休眠性であった。同一地域のチャと落葉性奇主の個体群の休眠率を比較すると、20℃の誘起温度では、全体的にチャの個体群のほうが発現率が低く休眠性が弱い傾向が見られたが、有意差が検出されたのは鹿児島などの暖地個体群のみに限られた。このように奇主による休眠性の変異は多少あるものの、奇主ごとの遺伝的な分化までは進んでおらず、異なる奇主間に遺伝子交流があるものと思われた。
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