研究概要 |
1)遺伝的変異:日本の各地から採集したナミハダニ黄緑型および赤色型の塩基配列(ミトコンドリア上のCOIの部分)を調べ,ブラジル,イタリア,台湾の個体群も含めて系統関係を解析した。その結果,日本の黄緑型,赤色型のそれぞれには塩基配列に二型があることがわかった。しかし黄緑型の2つのタイプは台湾,ブラジルの黄緑型とともに同じクラスターを形成し、赤色型とはある程度遺伝的に隔離されていた。しかしイタリアの二系を含めて解析すると,それら二系は混じりあった形で大きなクラスターを形成していた。ナミハダニは全体としては大きな変異を持つが,そのうちのごく一部の黄緑色,赤色型が独立して日本に侵入したと考えられる。そのため国内の個体群には変異が乏しく,かつ見かけ上、二型間での変異が多きなると考えられた。 2)休眠性の変異:カンザワハダニの休眠性はナミハダニよりも強く,15℃では屋久・種子島以北の個体群はいずれも100%近くの休眠率を示した。しかし、沖縄になると急激に休眠性が弱くなり,先島諸島の個体群は完全な非休眠性であった。しかしさらに南に位置する台湾個体群は低地のものでも高い休眠率を示し,沖縄の個体群とは遺伝的起源が異なることが示唆された。一方,台湾のナミハダニは非休眠で,遺伝的に日本のものと近いことが示唆された。
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