研究概要 |
(1)交配による種特異的寄生性遺伝子の同定 まず、高い交雑稔性を持つコムギ菌を共通親として栽培植物寄生菌群内での「ピポットターン交配」を行い、次のような遺伝子の存在を明らかにした。(a)アワ菌xコムギ菌:アワ菌とコムギ菌のコムギに対する寄生性の相違は2つの主働遺伝子に支配されていることが示唆された。これらをPwt1,Pwt2と命名した。(b)イネ菌xコムギ菌:本系のコムギに対する病原性には3つの主働遺伝子が関与していることが示唆された。(c)Brachiaria菌xコムギ菌:本系のコムギに対する病原性には強度非病原性遺伝子1つと、中度非病原性遺伝子1つが関与していることが示唆された。(d)エンバク菌xコムギ菌:本系のコムギに対する病原性には品種によって1つまたは2つの主働遺伝子が関与していることが示唆された。一方、エンバク品種に対しては1遺伝子の関与が示唆された。本遺伝子をPat1と命名した。 (2)種特異的寄生性決定遺伝子のクローニングへ向けて Pwt1,Pwt2,Pat1のクローニングを目的として、連鎖マーカーの探索を行った。その結果、Pwt1,Pat1についてはAFLPを用いたbulked segregant analysisにより連鎖マーカーを見出した。 (3)宿主特異性決定物質の同定と機能解析 メヒシバ菌から、植物毒素を単離した。構造解析の結果、本毒素はピリカラシンHであることが判明した。ピリカラシンHはメヒシバ菌の宿主特異性を決定する因子(宿主特異的毒素様因子)であることが示唆された。 (4)レトロトランスポゾンMAGGYの動態と寄生性分化における役割の解析 MAGGYのいもち病菌集団における分布を調査したところ、本因子はイネ菌・アワ菌に限って多コピー存在することが判明した。この両菌が、複雑にレース品種間特異性の発達した菌であることがら、本因子がその成立に何らかの役割を果たした可能性があると考えた。
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