ヨコバイ類のような吸汁性昆虫の摂食行動は 1.植物に定位する、2.口針を試し刺しする(feeding markの形成)、3.口針鞘を形成しながら目的の吸汁部位に到達する(口針鞘形成)、4.吸汁行動を開始する、と一般に言われている。しかしながら、「なぜ、吸汁性昆虫が目的の吸汁部位を認識し、口針を植物組織内の目的部位(篩管及び導管)に到達させ得るのか?」については未だ明かとなっていない。本研究では、吸汁性昆虫の摂食行動の化学的解析方法の確立および新しい化学的害虫防除の見地から、吸汁性昆虫(ツマグロヨコバイ)の吸汁部位認識機構解明を試みた。 In vivoでの口針鞘の観察 ツマグロヨコバイにイネを摂食させ、その際に形成される口針鞘を植物のパラフィン切片法を用いて観察した。 口針鞘の形成が始まっている部位・・・いずれの口針鞘も破生通気孔から形成が始まっていた。 口針鞘の到達部位・・・・・・・・・・形成された口針鞘の90%以上が維管束に到達していた。 これらの結果は、破生通気孔あるいはその周りの組織に、口針を維管束に到達させるための化学シグナル(吸汁部位認識物質(仮称))が存在するものと考えられた。 吸汁部位認識物質(仮称)の抽出・単離・精製 植物体をメタノールで抽出しヘキサンで脱脂して得られたイネの水溶性画分をパラフィルム越しにツマグロヨコバイに与えると、植物体内に形成される口針鞘と極めて類似した口針鞘が形成された。この抽出物中に吸汁部位認識物質が存在するものと考えられたことから、この生物検定装置を用いて、その口針鞘を形成させる物質の単離・精製中である。
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