ヨコバイ類のような吸汁性昆虫の摂食行動は1)植物に定位する、2)口針を試し刺しする(feeding markの形成)、3)口針鞘を形成しながら目的の吸汁部位に到達する(口針鞘形成)、4)吸汁行動を開始する、と一般に言われている。しかしながら、「なぜ、吸汁性昆虫が目的の吸汁部位を認識し、口針を植物組織内の目的部位(篩管及び導管)に到達させ得るのか?」については未だ明かとなっていない。本研究では、吸汁性昆虫の摂食行動の化学的解析方法の確立および新しい化学的害虫防除の見地から、吸汁性昆虫(ツマグロヨコバイ)の吸汁部位認識機構解明を試みた。 過去3年間の研究により、ツマグロヨコバイは口針を吸汁部位に到達させる前に、寄主認識物質(仮称)を認識し、その後口針を目的部位に到達させることが明らかとなり、その認識物質の構造をTricin 5-O-glucosideと同定した。この物質の生物学的意味を確定させる目的で同じくイネの吸汁性害虫であるセジロウンカとヒメトビウンカについてこの認識物質の単離・構造解析を調べたところ、いずれのウンカの場合もTricin 5-O-glucosideが寄主認識物質として作用することがわかった。すなわち、吸汁性昆虫の寄主範囲の決定には寄主認識物質が重要な役割を果たしていることがわかった。また、従来、probing刺激物質として報告されている化合物は広い意味での寄主認識物質であると考えられる。
|