研究概要 |
最終年度としての研究計画に基づき,平成10,11年度に行った吐糸行動シミュレーション方法に関する検討,シミュレーションアルゴリズムの基本構築をさらに進め,これらの完成を目指した。さらに,この結果を利用して,パーソナルコンピュータによるカイコの吐糸営繭行動の視覚化法を完成させる作業を進めた。また,異常環境下におけるカイコの営繭行動測定実験のデータから異常環境時の行動モデルに対する検討も行った。その結果,次のような成果を得ることができた。 1.カイコの行動を幾つかのパターンに分類し,それぞれの行動の統計的分布特性を明らかにするとともに,各行動間の関連性を明らかにし,営繭行動シミュレーションの基本アルゴリズムを構築することができた。 2.パーソナルコンピュータ上の基本OSであるウインドウズ95/98/NT/2000上で簡単に利用できる「カイコ行動視覚化システム」を開発することができた。この視覚化プログラムはカイコだけでなく,各種の行動研究での視覚化に応用できるものと考えられた。プログラムの基本構成は次のようになっている。使用言語はオブジェクト型開発言語のデルファイを用い,三次元グラフィックスライブラリOpenGLを利用した。シミュレーション行動表示のための基本オブジェクトクラスやメソッドは,全て研究者たちのオリジナルとして作成した。また,カイコの立体表示に対する考察を行い効率よい表示法を採用することができた。 3.さらに,異常環境下,特に営繭中に繭一部を切断した時の蚕の繭修復行動データから,吐糸営繭段階,切断個所の大きさ,修復時間との関係を解析し,異常環境下での吐糸行動の基本モデル作成に対する知見を得ることができた。
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