研究概要 |
1.卵サイズを支配するカイコ矮小卵(emi)遺伝子の形質発現-卵細胞質が次代幼虫の発育に与える影響解析 幼虫発育に及ぼす卵細胞質の影響について、卵殻容積が小さく、卵黄成分含量の少ないカイコ矮小卵を供試材料として、emi卵で形成された次代幼虫の体重を指標にして分析した。孵化直後の幼虫体重は正常>emiであったが、発育の進行に伴って正常>emiの関係は徐々に小さくなり、体重増加の回復が認められるものの最終齢期(5齢期)になっても正常>emiの関係は維持されていた。この事象は、卵黄物質の多少は胚子形成と後胚子発育に影響を及ぼすことを物語っている。 2.カイコ卵殻形質突然変異遺伝子、mgr(まだら灰色卵)の形質特性 正常なカイコ卵の卵殻は無色,半透明であるが,卵殻が灰白色を呈し不透明になる斑灰色卵(mgr卵)と呼ばれるmgr卵の灰色性発現の要因を究明する目的で卵殻の表面ならびに断面の構造について正常卵殻との比較観察を行った。mgr卵の卵殻表面における構造的相違は認められなかった。三層からなる卵殻断面のうち主要部分を占める中層は規則正しいラメラ状の積層構造をとるのに対して,mgr卵殻にみられる灰色状部分の中層断面にはラメラ状構造は観察されず,不規則・不定形の異常な構造となっていた。一方、卵殻の外層と内層については正常との間に構造的・形態的差異は観察されなかった。mgr卵の灰色性の発現は卵殻断面中層の形態形成異常に起因すると推察した。
|