研究概要 |
飼料用トウモロコシと水稲を細粒バーミキュライト土壌で栽培し,それぞれ,(^<15>NH_4)_2SO_4とK^<15>NO_3を交互に施用して^<15>N(重窒素)標識した。基肥にFe,Mn,Ca,Mg等の必須要素を与えた。同時に,栄養生長期および登熟期に^<13>CO_2を数回ずつ曝露して^<13>C(重炭素)標識し,^<13>C,^<15>N二重標識の飼料用トウモロコシと水稲を作成した。栽培した飼料用トウモロコシは体重120kgの佐賀県畜産試験場の小牛に食べさせ毎日牛ふんを採取し,これを50℃の乾燥器に5日間入れた後乾物重を秤量した。10日間にわたって同様のことを行なった。最初に,^<15>N標識の飼料を2日間食べさせ,続いて^<13>C,^<15>N二重標識の飼料を3日間,最後に,また^<15>N標識の飼料を5日間食べさせた。これらの乾燥牛ふんを粉砕し,よく混合して^<13>C,^<15>Nの標識が一定のものを作り,これを50℃の乾燥器中で4ヶ月かけて堆肥化し^<13>C,二重標識の牛ふん堆肥を世界で初めて作成した。30株の^<13>C,^<15>N二重標識の水稲はそれぞれ3cm程度に切り,稲わらとして作物に施用するものと稲わら堆肥として施用するものとに分けた。^<13>C,^<15>N二重標識の牛ふん堆肥および稲わらとその堆肥を水稲および陸稲に施用したところ,根から吸収する炭素はわずかであり,光合成による炭酸同化産物の方が圧倒的に多いことがわかった。したがって,有機栽培における一般栽培に対する優位性は根からの有機吸収にあるとはいえない。有機物堆肥多量連用での持続的養分の発現や土壌構造の発達が有機栽培の優位性に関係していると考えられる。
|