研究概要 |
大腸菌のF1-ATPase活性欠損株の細胞生化学的変化の検出: 野生株から取得したF_1-ATPase活性欠損株を、最少培地で連続培養して調製した生理学的に均一な細胞について、中枢代謝関連酵素活性を測定した。全体的な傾向として、欠損株では解糖系酵素活性は上昇、TCAサイクル関連酵素活性は低下することが見出された。呼吸鎖の成分であるNADHデヒドロゲナーゼの全活性は増大し、2つある成分の内、プロトン駆動力を形成しないNDAHデヒドロゲナーゼIIの活性が約5倍増大していた。コリネ型グルタミン酸生産菌のエネルギー代謝変異株の解析: 既得のCorvnebacteriumgIutamicumのH^+-ATPase活性低下変異株の発酵経過、中枢代謝酵素活性を測定した。変異株は親株と比較して,初期生育速度が低いが、菌体当たりの糖消費量が増大していた。また,グルタミン酸はほとんど生産されなくなり,代わりにピルビン酸,アラニン,乳酸の生成量が増加した。グルコース取込みに関わるPTS活性は4〜7倍に,解糖系酵素のホスホグリセレートキナーゼやピルベートキナーゼの活性は1.4倍に増大していた。また、ATPaseは2つのユニットから構成されているが、現在までに、その一方であるF_1を構成するタンパク質をコードする遺伝子群をクローニングした。 乳酸菌Lactococcus lノactis C2株のATPase遺伝子のクローニングと酸性条件下での発現制御の解析:本菌のATPase遺伝子発現が、酸性条件で増大するメカニズムを明らかにするために、本菌のATPaseオペロン遺伝子のクローニングを行った。H^+-ATPase遺伝子の中でも特に保存性の高いと思われる領域を推定プライマーを用いたPCR法により増幅し、プローブを作成した。これを用いてゲノムライブラリーからスクリーニングを行ったところ、F_1ユニットのほぼ全体をコードする遺伝子をクローニングできた。この配列を基にさらに上流域を取得し、本酵素遺伝子をすべてクローニングした。
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