研究概要 |
大腸菌のF1-ATPase活性欠損株の細胞生化学的変化の検出: F1-ATPase欠損変異株において増大することが明らかにされた呼吸鎖成分であるNADHデヒドロゲナーゼの活性増大メカニズムを明らかにするために,NADHデヒドロゲナーゼIおよびIIのプロモーター領域をクローニングした.また,大腸菌の反転膜小胞を用い,蛍光プローブ(DiBAC4(5):bis-(1,3-dibutylbarbituric acid)pentamethine oxonol)によって膜ポテンシャルを測定法する方法を確立した.一方で,F1-ATPase欠損変異株と野性株の発現タンパク質のプロテオーム変動解析を行うための2次元電気泳動条件を検討し,スポット分離のための最適条件を確立した. コリネ型グルタミン酸生産菌のエネルギー代謝変異株の解析: 昨年度に引き続き,Corynebacterium glutamicumのATPase遺伝子のクローニングを行い,完全長の遺伝子(atp I,B,E,F,H,A,G,D,C 全長約8000bp)が得られた.この遺伝子はこれまでに様々なバクテリアで報告されているATPaseの遺伝子と同様のオペロン構造をとっていた.この情報をもとに,既得のC.glutamicumのH±ATPase活性低下変異株の変異点解析を行ったところ,F1-ATPaseを構成するγサブユニット遺伝子の点変異であることを明らかにした. 乳酸菌Lactococcus lactis C2株のATPase遺伝子のクローニングと酸性条件下での発現制御の解析:ネオマイシン耐性株として既得のATPase活性低下変異株の変異点を明らかにするために,PCR法を用いて変異株の本酵素遺伝子を取得し,その塩基配列を親株と比較した.その結果,変異株では本酵素遺伝子中に3カ所の点変異が起こっていることが明らかとなった.これらはアミノ酸の変異を伴っており,この点変異が原因でATPase活性が低下したものと結論づけた.また,連続培養法により酸性耐性株の取得を試み,候補株を得た.
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