糸状菌における転写制御因子の分子解析とその応用

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10460039
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 塚越 規弘 名古屋大学, 農学部, 教授 (50115599)
• 研究分担者: 加藤 雅士 名古屋大学, 農学部, 助手 (70242849) ; 小林 哲夫 名古屋大学, 農学部, 助教授 (20170334)
• キーワード: タカアミラーゼA / CCAAT / AnCP / HAP複合体 / SREB / CREA / キシラナーゼ

研究概要

再生産利用可能な糖質資源の高度利用を目標に、タカアミラーゼA(TAA)遺伝子を中心にその発現特性を解析し、1)CCAAT配列とこの配列に結合する転写促進因子AnCPがTAA遺伝子の高発現に不可欠であること、2)カタボライト抑制を仲介するCREA因子がTAA遺伝子発現を抑制することなどを明らかにした。また、デンプン以外の糖質資源の利用を目標に、セルラーゼ遺伝子およびキシラナーゼ遺伝子を分離し、それらの遺伝子構造を明らかにした。
I. 転写促進因子AnCPについて:AnCP因子はHAPCを一つのサブユニットとして含む複数のサブユニットからなる約120kDaの複合体であることが明らかにされ、HAPC以外のサブユニットを解明するために、A)AnCP中のHAPCをGST-HAPC融合タンパク質で置換した複合体、AnCP-GST-HAPCを再構成することに成功した。今後、置換体の構成成分を解析することからHAPCと相互作用し、複合体を構成する成分を解明する。B)HAPC自身にはCCAAT結合能がないことから、酵母のHAP複合体を構成するHAP2及び5遺伝子を分離し、HAPCとの様々な組み合わせでCCAAT結合能の再構成を試みた結果、DNAに結合するには3種類のサブユニットが必要であることを明らかにした。また、タカアミラーゼA遺伝子の誘導的発現に関わるシスエレメントに結合する因子、SREB,の存在をゲルシフト法で明らかにした。
II. 転写抑制因子について:CREA因子はTAA遺伝子上のCCAAT配列近傍で4ケ所に結合するが、そのうちのどの配列が抑制に関わるかを部位特異的変異法で解析した結果、すべての部位が抑制に関与していた。また、C.gracile由来のキシラナーゼ遺伝子cgx発現抑制因子はTTGACAAATという9塩基配列に結合することを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Masashi Kato: "The Aspergillus nidulans CCAAT-binding factor,AnCP/AnCF,is a heteromeric protein analogous to the HAP complex of Saccharomyces cerevisiae." Mol.Gen.Genet.257. 404-411 (1988)
• [文献書誌] Noriyuki Kitamoto-: "Utilization of the TEEl-α gene(TEF1)promoter for expression of polygalacturonase genes,pgaA and pgaB,in Aspergillus oryzae" Appl.Microbiol.Biotechnol.50. 85-92 (1988)
• [文献書誌] Noriyuki Kitamoto: "Repression of the xlylanolytic enzyme-encoding genes expression in Aspergillus oryzae by introduction of multiple copies of the xynF1 promoter." Appl.Microbiol.Biotechnol.50. 558-563 (1988)
• [文献書誌] Kayoko Takeda: "Cloning of a thermostable ascorbate oxidase from Acremonium sp.HI-25 and modification of the azide sensitivity of the enzyme by site-directed mutagenesis." Biochimica Biophysica Acta. 1388. 444-456 (1988)
• [文献書誌] Noriyuki Kitamoto: "Pectin methylesterase gene(pmeA)from Aspergillus oryzae KBN616:its sequence analysis and overexpression,and characterzation of the gene product." Biosci.Biotech.Biochem.63. 120-124 (1999)