研究概要 |
再生産利用可能な糖質資源の高度利用を目標に、タカアミラーゼA(TAA)遺伝子を中心にその発現特性を解析し、誘導条件下ではプロモーター領域に存在するシスエレメントCCAAT配列が高発現に不可欠であり、CCAAT配列と特異的に結合する転写促進因子AnCPにより、TAA遺伝子の発現が亢進することを示した。また、デンプン以外の糖質資源の利用を目標にしてA.nidulansからセルラーゼ遺伝子を、Chaetomium gracileからキシラナーゼ遺伝子を分離し、それらの遺伝子構造を明らかにしている。 本研究は転写促進因子ならびに転写抑制因子の詳細な解析から、糸状菌における遺伝子発現制御系の特性を解明し、広範な多糖類を基質とした糸状菌の高度利用に新局面を拓くことを目的とした。実際には、アミラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ等に関する遺伝子の誘導発現制御機構について、タカアミラーゼAを中心に解析し、広域転写促進因子AnCP(CCAAT結合因子)およびアミラーゼ誘導因子(AMYR)やキシラナーゼ誘導因子(XLNR)の分子解析を試み以下のことを明らかにした。#1)CCAAT結合因子については新たにA.oryzaeからHAPB,HAPC,HAPE遺伝子を分離し、塩基配列を決定した。また、A.oryzaeの各サブユニットは機能的にA.nidulansのHAPサブユニットを代替できることも明らかにした。#2)タカアミラーゼA遺伝子の発現誘導に必須なシスエレメント(SRE,Starch Resposive Element)を特定するとともに、SRE結合因子SREBの存在を明らかにした。また、A.nidulansからクローン化したアミラーゼ誘導因子(AMYR)はSREB因子と同一であることも示唆した。#3)セルラーゼについてはA.nidulansでCMCにより誘導されるeglA遺伝子を使用して、本遺伝子の誘導発現に必要なシスエレメントの解析を試みた。#4)キシラナーゼについてはA.oryzaeに由来するxynFI遺伝子の誘導発現を支配するXLNR遺伝子をA.oryzaeより分離して解析した。
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