研究概要 |
本年度は、先ず(S)-2-(アントラセン-2,3-ジカルボキシイミド)プロピルトリフルオロメタンスルホネート[(S)-2AP-OTf(I)]及び(S)-1-(アントラセン2,3-ジカルボシキイミド)2-プロピルトリフルオロメタンスルホネート[(S)-1A2P-OTF(II)]を合成し、I、IIのメチル・エチルでキラリティーをもつメチレン鎖の異なる光学活性カルボン酸のHPLCと^1H-NMRによる不斉識別能を研究した。その結果、(1)IはC2〜C8位までの不斉をHPLCで識別できるフェムトモルレベルでの検出可能、(2)(R)、(S)の溶出順序はキラル中心の奇数、偶数で逆転する、(3)^1H-NMRではC2〜C11まで識別でき、分岐メチルのケミカルシフトの差[(R)-(S)]の+、-がHPLCと同様、奇数、偶数で逆転する、ということが分かった。これらのことから、I、IIの脂肪酸エステルは期待通リゴーシュ効果で降り曲がったコンフォメーションをとり、CH-π相互作用によりメチレン鎖がアントラセンの上に規則正しく乗っていることが分かった。 次に、光学活性トランスシクロヘキサン-1,2-ジオールを原料とした(R,R)-および(S,S)-2-(アントラセン-2, 3-カルボキシイミド)シクロヘキサノール試薬(III)の合成と、D-グルコースを原料とした6-デオキシ-6-(アントラセン-2,3-カルボキシイミド)-2,3,4-O-アセチル-α-D-グルコピラノシルイミデート(IV)の合成を行なった。I、IIはコンフォメーション解析の結果、ゴーシュ型をとる確率は高々80%であることがわかった。IIIは100%ゴーシュ型であるので、I、IIよりも優れたキラル識別能が期待でき、IVはカルボン酸以外にアルコール、アミンの誘導化が可能であるので、III、IVを用いた研究を行なう計画である。
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