研究概要 |
誘導化可能な官能基から遠隔位に不斉中心を持つ光学活性化合物のエナンチオマーの識別は不可能と考えられていたが、ゴーシュ効果、CH-π相互作用を巧みに利用したカルボン酸用不斉誘導化試薬、(R)-および(S)-2A-1P-OTf(1)と(R)-および(S)-1A-2P-OTf(2)(第一世代試薬)を開発し^1H-NMRではカルボキシル基から2〜11位まで,HPLCでは2〜8位までの分岐脂肪酸のエナンチオマーの識別に成功した。これら試薬は単結合の自由回転をゴーシュ効果を初めとする立体有機化学的要因で規制したものであるが、この規制は高々80%であることが分かったので、試薬分子自身が100%キラルなゴーシュ立体化学をもつ試薬、(R,R)-および(S,S)-2A-CH-OH(3)(第二世代)を開発した。3は^1H-NMRでは、1、2と同じ識別能であったが、HPLCでは2〜24位までの識別が可能であることを見い出した。 また、遠隔位に不斉をもつカルボン酸類の他、アルコール類の試薬として(R,R)-および(S,S)-2A-CH-COOH(4)及び3、4、6-O-Ac-2A-2d-β-Glu-Br(5)を開発し、メチル分岐アルコール類のエナンチオマーの超高感度識別法を開発した。 さらに、分子内に2箇所以上の分岐を持つ脂肪酸の全光学異性体の識別も可能であることを明らかにした。 天然物の絶対構造式決定への応用として、海洋性セラミド、およびガングリオシド類の絶対配置の決定を行なった。
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