研究概要 |
1.病態植物の二次代謝変化についてさらに情報を得るために,病原微生物成分に対する植物の反応をジャガイモをもちいて解析した。ジャガイモに主要病原菌である疫病菌の細胞壁構成成分と類似構造を持つβ-1,3-オリゴサッカライド,ラミナリンを処理するとフェノール性アミド化合物のひとつであるパラクマロイルオクトパミン(PCO)が顕著に生成蓄積する。一方,ジャガイモではテルペン化合物のリシチンがファイトアレキシンとして病原微生物の感染に抵抗して生成することが知られている。ラミナリン処理したジャガイモ塊茎組織抽出物をGCMSを用いて分析したところ,同様にリシチンが検出され,ラミナリン処理が病原菌感染の場の相互作用を再現していることがわかった。さらに疫病菌の特徴的代謝成分である不飽和脂肪酸アラキドン酸を塊茎組織に処理したところ,ラミナリン処理の場合と同様にPCOが誘導されることが判明した。この結果より,ラミナリン処理によって生じるPCOが有効なジャガイモの疫病病態マーカー化合物となりうることが示されたと言える。タイムコースを検討したところ,PCOの蓄積はファイトアレキシンとして知られているリシチンの蓄積に比べより速やかに観察することができ,この点もマーカー化合物として有利であると考えられた。 2.ナシ黒斑病菌Alternaria alternata Japanese pear pathotypeが特異的に生産する植物毒素で有用なマーカー化合物であるAK-toxinについて,安価に入手できる3-methyl-2-buten-1-olを出発原料とし,シャープレスの不斉エポキシ化反応を利用する高度に立体選択的かつ効率的な新規合成方法の確立に成功した。今後,本化合物の微量分析法を開発していく上で有用である。
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