突然変異体を用いたブラシノステロイドの生合成とその調節機構に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10460050
• 研究機関: 理化学研究所
• 研究代表者: 藤岡 昭三 理化学研究所, 植物機能研究室, 先任研究員 (60165355)
• キーワード: ブラシノステロイド / 生合成・代謝 / ブラシノステロイド生合成変異体 / シロイヌナズナ / 矮性変異体 / ブラシノステロイド非感受性変異体 / BAS1 / BRI1

研究概要

これまでに見い出されたブラシノステロイド(BR)突然変異体は、いずれも、暗所では、胚軸の伸長抑制、子葉の展開、光誘導性遺伝子の発現等が見られ、明所でも、矮性、頂芽優勢の減少、雄性不稔等、極めて興味深い形質を示す。本年度は、BR突然変異体bas1とbri1との解析を進めた。
シロイヌナズナのbas1は、アクティベーションタギングにより見い出された矮性変異体であり、P450の過剰発現により、det2のようなBR生合成変異体とよく似た表現型を示す。BAS1がBRの生合成あるいは代謝に関与しているか否か明らかにするために、内生BRsの定量分析を行った。その結果、bas1では、brassinolide(BL)、castasterone(CS)、6-deoxocastasteroneのレベルが著しく減少しており、BAS1はBRレベルの制御に関与している可能性が示唆された。また、無菌培養したシロイヌナズナの実生を用いてBLの代謝実験を行ったところ、BLは26-hydroxybrassinolide(26-OHBL)に代謝されることが明らかになるとともに、bas1ではcontrolに比べ、この変換が促進されていることを見い出した。さらに、イネのラミナジョイントテストやシロイヌナズナのBR生合成欠損変異体を用いた回復実験から、26-OHBLの生理活性はBLに比べ著しく弱いことが判明した。以上の結果から、BAS1はBLの水酸化に関与していること、ならびに、bas1では、活性型のBLが水酸化されて不活性化されることにより矮性形質を示すことが示唆された。生合成欠損の変異体と同様に矮性を示すが、BRの投与によってその表現型の回復がみられないBR非感受性の突然変異体であるbri1について、内生BRの検討を行った。Bri1は野生型で検出されたすべてのBRsが検出され、bri1では6-oxo系列のBRsを顕著に蓄積していることが明らかになった。とりわけ、BLやCSでは、野生型の数十倍蓄積しており、BRI1はBR生合成のfeedback制御に関わっていることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Choe,Dilkes,Gregory,Ross,Yuan,Noguchi,Fujioka,Takatsuto,Tanaka et al.: "The Arabidopsis dwarfl mutant is defective in the conversion of 24-methylenecholesterol to campesterol in brassinosteroid biosynthesis"Plant Physiol.. 119. 897-907 (1999)
• [文献書誌] Noguchi,Fujioka,Takatsuto,Sakurai,Yoshida,Li,Chory: "Arabidopsis det2 is defective in the conversion of (24R)-24-methylcholest-4-en-3-one to (24R)-24-methyl-5α-cholestan-3-one in brassinosteroid biosynthesis"Plant Physiol.. 120. 833-839 (1999)
• [文献書誌] Noguchi,Fujioka,Choe,Takatsuto,Yoshida,Yuan,Feldmann,Tax: "Brassinosteroid-insensitive dwarf mutants of Arabidopsis accumulate brassinosteroids"Plant Physiol.. 121. 743-752 (1999)
• [文献書誌] Neff,Nguyen,Malancharuvil,Fujioka,Noguchi,Seto,Tsubuki,Honda et al.: "BAS1 : A gene regulating brassinosteroid levels and light responsiveness in Arabidopsis"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 96. 15316-15323 (1999)
• [文献書誌] Seto,Fujioka,Koshino,Yoshida,Tsubuki,Honda: "Synthesis and biological evaluation of extra-hydroxylated brassinolide analogs"Tetrahedron. 55. 8341-8352 (1999)
• [文献書誌] Fujioka,Noguchi,Watanabe,Takatsuto,Yoshida: "Biosynthesis of brassinosteroids in cultured cells of Catharanthus roseus"Phytochemistry. 53. 549-553 (2000)