研究概要 |
これまでに見出されたシロイヌナズナのブラシノステロイド(BR)矮性突然変異体は、いずれも、暗所では、胚軸の伸長抑制、光誘導性遺伝子の発現等が見られ、明所でも、矮性、雄性不稔等、極めて興味深い形質を示す。本研究では、BR関連の矮性突然変異体の解析を通して、BRの生合成やその調節機構の解明を試みた。 世界で最初に単離されたBR変異体det2の解析を行った結果、det2が実際にBRの生合成欠損体であることを実証するとともに、5α-reductionに変異があることを明確にした。dim(dwf1),dwf4,dwf5,dwf7,fackel等についても解析を進め、dim(dwf1)はΔ^<24(28)>の還元、dwf4は側鎖22α位の水酸化、dwf5はΔ^<7(8)>の還元、dwf7は5位のdesaturation、fackelはΔ^<14(15)>の還元に変異のあるBR生合成欠損体であることを明らかにした。また、activation taggingにより見出されたbas1は、cytochrome P450の過剰発現により矮性を示すが、解析の結果、bas1では、活性型のBRが水酸化されて不活性化されることにより矮性形質を示すことを明らかにした。さらに、生合成欠損の変異体と同様に矮性を示すが、BRの投与によってその表現型の回復がみられないBR非感受性の変異体であるbri1では、活性型のBRを異常に蓄積していることを見出した。BRI1は、BRの原形質膜に局在するBRの受容体であり、BR生合成のfeedback制御にも関わっていることが示唆された。 本研究により、変異体の示す矮性をはじめとする数多くの表現形質が、実際にブラシノステロイドの欠損によるものであることを実証できただけでなく、変異体における変異部位の特定や生合成・代謝酵素に関する知見も得られ、ブラシノステロイドが植物の正常な生長や発達に必須の植物ホルモンであることを明確にすることができた。
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