大腸がんは、日本においても発症頻度が増加しており、特にその発症に関与する主な因子が食事であることより、食品科学、栄養科学的アプローチは重要である。食物繊維による大腸がん発症頻度の抑制は、疫学的には相関が見られるが、実験的化学発がんの抑制に関しては必ずしも一致した効果が得られていない。これは、使用する発がんモデルの問題に起因すると考えられる。本年度はこれまでに、新しい大腸がんモデルとして、放射線による大腸がん作成の条件をラットで検討し、低レベルのγ線(^<60>Co)を下腹部に限定して反復照射することにより、大腸がんの前段階である多重異常クリプトを大腸粘膜に形成させることに成功した。 また、放射線曝露後の大腸粘膜の経時的変化の生化学的指標として、DNAの酸化損傷により生ずる塩基の誘導体8-hydroxydeoxyguanosine定量を電気化学検出器を用いた方法を確立した。この方法により、低線量である3Gyの照射後に大腸粘膜DNA中の8-hydroxy deoxyguanosine量は約2倍に上昇することが確認された。 さらに、プロモデオキシウリジンを使った免疫組織学的方法と、microdissection法によるmitotlc cellを観察する方法により大腸上皮細胞の増殖速度を測定し、放射線照射後に大腸粘膜上皮細胞の増殖速度の増大と増殖帯の拡大を観察した。
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