大腸がんは、日本においても発症頻度が増加しており、特にその発症に関与する主な因子が食事であることより、食品科学、栄養科学的アプローチは重要である。食物繊維による大腸がん発症頻度の抑制は、疫学的には相関が見られるが、実験的化学発がんの抑制に関しては必ずしも一致した効果が得られていない。これは、使用する発がんモデルの問題に起因すると考えられる。昨年度は、下腹部への低レベルのγ線(60Co)反復照射による多重異常クリプト(大腸がんの前がん病変)の発生に対して、発酵性の高い食物繊維の作用はapoptosisが関与していることが明らかにされた。本年度、これと対比するため化学発ガン剤を使ったモデルに対して、種々の食物繊維、およびその発酵産物の作用を検討した。この結果、発酵性の低い水溶性食物繊維の摂取は、前投与においてのみ、大腸がん前がん病変の形成を抑制すること。大腸発酵産物である酪酸は、化学発ガン剤による大腸がん前がん病変の形成を抑制することを、in vivoで初めて明らかにした。
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