研究概要 |
ドコサヘキサエン酸(DHA)を唯一の構成脂肪酸とするトリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール(1(3),2-型、70%)およびモノアシルグリセロール(1(3)-型、90%)を化学的に合成し、DHAのモル数が等しい量をSD系雄ラット(4週齢)に強制的に経口投与し、リンパ管に挿入したチューブからリンパ液を回収した。その結果、リンパ液への移行は、モノアシルグリセロール>ジアシルグリセロール>トリアシルグリセロール≧エチルエステルとなり、とくにモノアシルグリセロールは有意に速かった。リンパ液中では、投与した脂質構造に関わりなく、DHAの大部分はトリアシルグリセロールとして存在した。また、リンパ中トリアシルグリセロールにおいて、DHAのグリセロールとの結合位置には、投与脂質構造の影響は認められなかった。 つぎにDHAの含有脂質の構造の違いがDHAの体内分布や脂質代謝にどの程度反映されるか、短期飼育により比較した。SD系雄ラット(5週齢)にAIN-93G飼料中の油脂の10%を上記と同じDHA含有脂質で置き換え、1週間飼育した。飼育終了後、麻酔下で採血、各臓器の摘出を行い、脂質分析に供した。DHAの見かけの吸収率は、モノアシルグリセロールが有意に他より高かったが、その差はわずかで、もっとも低かったエチルエステルでも95%を超えた。すべてのDHA投与群で血漿総コレステロール、HDL-コレステロールは対照群より有意に低下したが、DHA群間に有意差はなかった。しかし、血漿トリアシルグリセロール、リン脂質値はDHA群間で異なり、トリアシルグリセロール投与により、モノアシルグリセロールやエチルエステルより有意な低下が見られた。血漿中のDHA量はトリアシルグリセロール群で有意に低かったが、DHAの総脂肪酸に対する比率は、DHA群間に差はなかった。肝臓中のDHA量は、すべてのDHA群間に差がなかった。
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