研究概要 |
ダムが水辺林の更新動態に与える影響について,流量および流砂量の変化,さらに攪乱頻度と強度の観点から文献レビューを実施し,応用生態工学に総説として掲載した。 フィールドでの調査は,1997年にダムが建設させた北海道札内川ダムと,いまだダムなどの構造物が建設されていない対照河川歴舟川で継続調査を実施している。両河川は,流量規模や季節変動ともにきわめて類似した性質を示しており,比較するうえでの条件は整っている。札内川ダムによる水量調節の影響は,新たな更新立地(裸地)が形成されにくいという点では強く影響しているが,水位低下に伴う水分ストレスについては,あまり影響を及ぼさないことが明らかになった。 歴舟川におけるケショウヤナギなどの先駆性広葉樹,およびハルニレなどの遷移後期種の解析から,各河畔林構成樹種の優占度は,超過洪水確率に対応した地形面区分(physiotope区分)とよく対応し,その立地環境(粒径,水分,有機物含有率など)の計測と直接環境傾度法の一つであるCCA(Canonical Correspondence Analysis)解析により,各樹種の好む物理環境が明瞭に表現できるようになった。同時に,河畔樹種生活史の各ステージに応じた生息場環境の解析から,ケショウヤナギに代表される水辺林を保全するためには,動的立地環境が保たれ,生息場環境の多様性がセットとして維持されることが重要であることが明らかになった。
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