スギ林冠の炭酸ガス固定機能を明らかにするために、(1)葉の空間分布を決定する枝の構造と、(2)葉の生産性を決定する樹冠内窒素分布について研究した。 (1)枝の構造 スギの枝は分布や密度に規則性が認められ、スギ樹冠の構造は枝を1個のモジュールとしたモデルによって表現された。また、スギでは幹シュートの上位から中位の枝は樹冠の空間獲得の機能、下位の枝は空間充填の機能を持つことが明らかにされた。 間伐により本数密度を変えた場合、樹冠のサイズには差は認められなかったが、着生する葉量とその分布に差がみられ、間伐林分では同化器官の配置を変化させることによって生産性を高めていた。 枝打ちにより葉量を低下させた場合、幹や枝の伸長量はともに低下したが、枝の成長低下率が小さく、結果的に傘型の樹型となった。これは、光合成器官の減少を残った枝への最配置で補おうとした結果であると考えられた。 (2)窒素の分布 当年葉の窒素量は光強度と正の相関にあり、樹冠上部で高く、下部で少なかった。しかし、一年生以上の葉では樹冠の深さや葉齢に関係なく一定の値を示した。さらに、立地が異なる場合の樹冠における窒素分布をモデル化するために、斜面に生育するスギの窒素分布を調べた。この結果、立地が異なってもスギ樹冠の窒素分布は光強度と地位の2因子を用いてモデル化できることが明らかにされた。これらも結果を用いて、窒素分布を取り入れた炭酸ガス固定モデルを構築した。モデルには林冠の窒素分布に関するパラメーターと葉の光合成に関するパラメーターを用いた。スギ林分で得られた値をモデルに代入して計算した結果、適合度の高いモデルであることが確認された。
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